http://db.jil.go.jp/cgi-bin/jsk012?smode=dtldsp&detail=F2001050239&displayflg=1
大学時代の友人がmixiの日記で取り上げてみたので僕も読んでみた。
「大学卒業生の就職と会社への初期適応過程 ~新構想キャンパスの卒業生動向調査~」というタイトル。
2000年にSFCの榊原先生が書いた論文のようでかなり興味深い。
ちなみに2000年というとSFCが出来て10年目にあたる年で今と学生の特色も違うし、SFCという環境にも大きな差はあると思う。
(著者抄録) 若年層が転職しやすいとか、就業意識に変化が出ているとかいわれるが、実態はどうだろうか。本稿はその問題を、慶應義塾大学の新設キャンパスである湘南藤沢キャンパス(SFC)の卒業生についてみてみた。卒業後3年以内の卒業生を観察すると、転職そのものはまだ少ないが、会社への適応で困難を抱えている者の多いことがわかった。また、少なからぬ卒業生がいわゆる就社でも就職でもなく、働く場のありようにこだわる「就場」の意識を持っていることもわかった。そしてこの場合、会社内でのイニシエーションで特殊な困難を経験するように思われた。
やはり概要をみてわかるように、若干SFCの卒業生の就業に関する意識について特色がある模様だ。
実は今でも根本的なものは変わっていないと思うけど、多分昔に比べて大企業志向の人が増えてきているのも確かだと思う。
第1はSFC卒業生の多様性の高さである。たとえば就職先をみると,メーカー,商社,金融,小売・商業,マスコミと多岐にわたっているし,職種も,いわゆる事務系から完全な技術系まで幅広く分布している。就職先企業の規模も大,中,小とさまざまで,要するに特定種類の会社に集中していない(注6)。
卒業生のこの多様性の高さは,SFCのキャンパス自体,いわゆる文系と理系を融合させた学部編成になっていることに加えて,入口が三つもある多元的な入試制度(SFCでは一般入試と塾内進学のほかに,上述したAO入試を実施している),幅広いカリキュラム構成,そして自由度の高いカリキュラム選択,等々の結果であろう。
第2の特徴は,大学時代に習得したことや形成した価値・行動様式を直接的に実社会,とくに会社に持ち込もうとする傾向が,卒業生の間に強くみられる点である。
日本の大学生は一般に「大学と会社とは別世界。学生時代に学んだことや形成した価値・行動様式は企業では通用しない。だから,学生時代に培ったものは組織へのエントリー時にいったん白紙に戻すべきだ」と考えているのではあるまいか。それに対して,SFC卒業生は,大学で習得したものがそのまま仕事の場でも適用できると考えている節がある。そのかぎり,企業をまったくの別世界とはみていないのである。そのため,学生時代に学んだことをいったん白紙に戻すことなく,それを企業のなかに直接的に持ち込もうとする傾向がある。
第3に,就職意思決定に際して,少なからぬ卒業生が「職場」というファクターを重視していることである。
確かにこの分類の仕方は正しいと思うし、今もなお根強く残っているものかと思った。
ただ、第一に挙がっている多様性についても近年はどうなのだろうか。
就業意思決定パターンのバリエーションを規定する大学生活の類型として,ここでは「学習モード」「課外活動モード」,および「キャンパスライフモード」の三つを区別している。
そのうち第1の学習モードとは,大学時代に最も力を注いだのが狭い意味の学習であり,より具体的には授業,研究会(ゼミ),プロジェクトワーク(特定の問題を課題として組織される,短期のグループ活動)などに力を入れた人をさす。勉強中心の真面目な学生がこれに相当する。
第2の課外活動モードとは,SFC外の人々とのやりとりを重視した課外活動全般,たとえばサークル・同好会,体育会,アルバイト,地域活動などに注力した人をさす。
(中略)
以上の二つが,いわば伝統的な大学生活モードの代表的2類型であるのに対して,第3のキャンパスライフモードというのはSFCに独特の大学生活モードであり,ほかならぬSFCキャンパスでの生活を重視し楽しんだ人たちをさす。何日も夜間にキャンパスにとどまって「残留」し,グループワークやサークル活動に没頭するなど,要するにSFCのコミュニティのなかで友人と寝食を共にする生活を送った学生の生活スタイルが,このキャンパスライフモードである。これは,「24時間キャンパス」を謳い,各種のキャンパス施設を原則的に24時間開放しているSFCの条件を,最もよく生かした学生生活モードである。
学期中のSFCに深夜訪問したゲストは,たくさんの学生が「残留」しているのに出くわすはずである。通常の学期中でもけっこう多いが,試験が近づくと,深夜12時をすぎても数百人単位でキャンパスに学生が残っている。夜のほうがコンピュータ利用の便が良いほか,遠隔地に孤立して立地しているキャンパスの地理的条件も関係している。私が直接に見聞した事例で,ある学生は年間約130日に及ぶ「残留」経験者であった。
(中略)
さて調査結果によると,大学時代の生活様式と就業意思決定パターンとの間に,比較的はっきりした対応関係があった。すなわち,学習モードの人は仕事の選択(就職)をし,課外活動モードの人は会社の選択(就社)をし,そしてキャンパスライフモードの人は職場の選択(就場)をするというように,大きな対応関係が両者の間に存在したのである。
このうち,前二者はSFC以外でも広く観察される対応関係であるが,それに対して,最後の「キャンパスライフモード→職場の選択」というのは,SFCに独特の対応関係である。少なからぬSFC卒業生の間にこの「キャンパスライフモード→職場の選択」という関係がみられることは注目すべき点である。
この分析で言うと、僕の場合その3にあたる「キャンパスライフモード」であったと思う。
僕がSFCの学部にいた2003年から2007年はブロードバンド環境の普及により「残留」という所謂学校への夜間宿泊が減っていたと思う。
また、技術系の学生も以前に比べて減っていた為か、どちらかというとキャンパス設立当時に比べて普通の大学に近くなっていた印象もある。
個人的には恵まれた環境にあったのか、この中の「キャンパスライフモード」にあった訳だが、確かに“職場の選択”というのは重要なファクターだと今でも思っていたりする。
第1は,ある意味で古典的な技術系スペシャリストのタイプである。これはSFCで技術系の勉強に真面目に取り組んだ卒業生に見受けられた。
(中略)
そのため仕事の面でも技術系と非技術系の間の中途半端なものになってしまい,本人も煮え切らないまま,仕事への執着が薄れていく,といったケースである。
第2は,企業で力を持て余しているタイプである。このタイプは,キャンパスで積極的な学生生活を送った卒業生に多い。
(中略)
二つの事例は単なる過渡的現象とみることもできるが,新構想キャンパスと実社会との間のギャップの大きさを示唆しているとみることもできる。また,新構想キャンパスで育っていく学生たちは,自分が何者であるかという,自己のアイデンティティの確立に苦しむ可能性があることも,それらの事例は示唆している。
いずれにせよ,新構想キャンパスにおける卒業生の就職と会社への初期適応過程を考えるうえで,こうした事例は多くの示唆を含んでいる。今後,この種の事例観察を蓄積していくことが重要であろう
この点については第一の指摘は僕は学部でも非技術系であった為、あてはまらないと思うが、第二の指摘についてはそれに近いものを感じた気もする。
というのは、恐らく社会人なら誰もが経験することだとは思うが、ある程度仕事に慣れてしまい、今まで苦労していたものが簡単に出来るようになってしまうと退屈感が出てくる感覚と似ているのかもしれない。
僕の場合はそういう感覚が出てくるだろう時期を境に大学院に進学したのでそれを実際に感じる間も無かったけど、あと1年以上いたら確実にそういう感覚に陥っていただろうというのは薄々感じていた。
これは多分ベンチャーに近い会社だと大企業に比べてマシではあるけれども、会社が大きくなるにつれて環境も変化するので少しずつ状況も変わってくるのかもしれない。
最近、たまたま丁度この4月に新社会人になったSFC卒の人と話す機会が多いのだが近況を聞くたびにやはり仕事に対する感覚は若干他の学部卒の人に比べて変わっているような気もしている。
それについては僕は個人的に肯定的なのだけどね。
そんな感じでちょっと色々考察できそうだったので思ったことの一部を書いた。
多分この話題、かなり奥が深いと思うのでもし学部をSFC卒の人がいたらこの論文を読んで自分の就業経験と照らし合わせて感想を教えてもらえたらと思います。
この辺の検証の2010年バージョンとか違う角度でもいいから出してみると面白いかも。特に企業の人事の人とかはそういう背景もちょっとわかってもらえると学生と会社のいいマッチングが行えるかなと思います。